【作曲家】
▶ジョビー・タルボット
Joby Talbot (1971-)
・ロンドン出身。
・作曲をブライアン・エリアスに習った。
・ギルドホール音楽演劇学校で音楽修士号を取得。指導教官はサイモン・ベインブリッジ。
・2015年に「冬物語」によりブノワ賞作曲家部門を受賞。
・現時点でロイヤル・バレエ団に長編バレエ作品を提供した存命の作曲家はタルボット一人。
【音源】
▶不思議の国のアリス/愚者の楽園
Alice's Adventures in Wonderland / Fool's Paradise
・概要
振付師のクリストファー・ウィールドンとコラボしたバレエ作品のアルバム。「不思議の国のアリス」はルイス・キャロルの児童文学に基づく2011年初演の長編物語バレエで、一緒に収録されている「愚者の楽園」は元々ウィールドンのバレエ団のために書かれた作品。
・カタログ情報
Signum Classics (SIGCD327)
・主な演奏者
ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
クリストファー・オースティン(指揮)
・振付師のクリストファー・ウィールドンとのコラボのきっかけはタルボットが2007年に「瀕死の白鳥」につけたピアノ・トリオ作品。この作品を聴いたウィールドンがタルボットにコンタクトを取ったことでコラボが実現し、同年の「愚者の楽園」、そして2011年の「不思議の国のアリス」が誕生する。日本では2018年に「不思議の国のアリス」が新国立劇場で初演され、好評だったらしく2022年にも上演されている。
・音楽面の感想として、持続的な背景音に包まれながら音価の短い単純な音列やパーカッションの反復がきらきらと弾ける様子はタルボットが2009年に発表した「タイド・ハーモニック」にも通じるもので、聞き心地の良い和声と相まって心地よいワクワク感をもたらしてくれる。不思議の国の冒険によく馴染んでいると思うのは自分だけだろうか。
・ロイヤル・バレエ団の上演の様子はDVDで見ることができる。筆者は終始ニコニコしながら鑑賞したが、ウィールドンの振り付けと衣装や背景、小道具の美術からなるバレエの映像も素晴らしい。アリスの物語の親しみやすさもあり、普段バレエを見ないという人にも勧めやすく、クラシックの入り口にいる子供たちにも鑑賞してほしい作品だ。
・ちなみに一緒に収録されている「愚者の楽園」も「タイド・ハーモニック」や「不思議の国のアリス」に通じる作風になっている。「愚者の楽園」の筋については特にブックレットや作曲者のウェブサイトに記載はなかったので知らないが、探せばその辺にあるかもしれない。