▶ロココ時代(rococo)
「ロカイユ」という貝殻装飾が愛好された時代であると共に、この装飾に象徴される自由で非対称な表現が芸術に広く浸透していた時代を指す。時代としては17世紀初頭(ルイ14世治世末期~ルイ15世治世初期)から1789年(フランス革命)までで区切られる。
▶「ロカイユ」(rocaille)
イタリアにルーツを持つ装飾。石や珊瑚、貝殻をモチーフとした装飾を指す名称であったが、ロココ時代には特に貝殻をモチーフとした装飾を指すようになった。庭園にある洞窟や噴水に施され、ロココ時代には特に愛好された。ロカイユの貝殻のモチーフは、古典主義美学に収まらない非対称な形態と自由な変形を特徴とする。
▶ローブ・ア・ラ・フランセーズ(フランス風ローブ)
1750年頃からフランス宮廷の正式な衣装となった。
ローブの前面は前開きになっており、空いた胸元にはV字のパネル状胸衣(ストマッカー)を装着する。このストマッカーは注意を引く部分となるため、立体的かつ凝った装飾がなされる。
ローブの背面は首元から足元へ真っ直ぐ流れる深いひだ(ヴァトー・プリーツ)を持つ。ヴァトー・プリーツはアントワーヌ・ヴァトーの絵画に登場することに由来する名称である。ヴァトー・プリーツのプリーツの幅は時代と共に狭くなり、1730年頃には両肩の幅があったものが1780年代末には背中中央10cm弱ほどの幅になった。
ローブのスカート部分(オーバースカート)は左右に広がっており、これは横張りの腰枠を持つ下着(パニエ)とアンダースカート(ペティコート)によって支えられる。
▶流行の生地とアクセサリー
17世紀に紹介されたインド製の木綿の染織物(更紗、サラサ)は人気が高く、衣服の他に室内装飾にも用いられた。一方、18世紀には西ヨーロッパでも捺染(なっせん)の技術が発達した。捺染は染料を溶かした糊で模様を描き、固着した後に水洗いで仕上げる染色技法である。
18世紀にはエキゾチズムとしての中国趣味(シノワズリ)が発達し、花鳥などの模様を手描きした平絹の生地も流行した。
ロココを代表するアクセサリーはレース用品であり、髪の垂れ飾り(ラッペト)や袖飾り(アンガージャント)が流行した。その他に人気のあったアクセサリーとして、ネックリボンや対になったブレスレット(繋げるとネックレスになる)が挙げられる。
▶ローブ・ア・ラ・ポロネーゼ(ポーランド風ローブ)
イギリスから輸入された庭園の散歩の習慣に応じて出現した、スカートの裾を引き上げたスタイル。労働中にスカートの裾を捲って汚れないようにするという庶民の習慣を原型としている。
ローブ・ア・ラ・フランセーズと異なり、ヴァトー・プリーツは消え、パニエはスカートを後ろへ突き出す形状になっており、オーバースカートは分けられてリボンでくくられる。
▶ローブ・ア・ラングレーズ(イングランド風)
ロココ期からフランス革命期への移行期に出現したスタイル。
新古典主義やイギリス様式の影響を受けて堅苦しさや装飾性が後退し、機能性や単純さ、自然さが重視されている。また、背中のプリーツはウエストで縫い止められている。
■関連リンク
Wacoal Body Book|ドレスの着せ付け方法
https://www.bodybook.jp/kci/123180.html
京都服飾文化研究財団|KCIデジタルアーカイブ|ドレス
https://www.kci.or.jp/archives/digital_archives/1700s_1750s/KCI_001