2022年10月24日

コンサートの感想|ラトヴィア放送合唱団(2022年10月22日)


▶コンサート情報
「ラトヴィア放送合唱団&新日本フィルハーモニー交響楽団」
・トリフォニーホール開館25周年&新日本フィルハーモニー交響楽団創立50周年記念。
・2022年10月22日(土)、すみだトリフォニーホール。

▶曲目
▷プログラム
・J.S.バッハ:イエス、わが喜び
・リゲティ:ルクス・エテルナ
・ヴァスクス:私たちの母の名
・モーツァルト:レクイエム ニ短調
▷アンコール
・ヴァレンティン・シルヴェストロフ:ウクライナへの祈り

▶感想
・リゲティの生誕100周年が来年ということで、トーン・クラスターの合唱曲が聴きたいと思って調べていたら見つけた公演。後で調べてみたら、ラトヴィア放送合唱団は1940年に設立された歴史ある実力派の合唱団であり、現在の指揮者シグヴァルズ・クラーヴァさんの下で国際的名声を高め、2017年に初来日したそうである。この合唱団については恥ずかしながら何も知らなかったけど、とりあえずCDを聴いてみたところ「めっちゃいい!(小並感)」と思ったのでチケットを買った。また、今回のプログラムはリゲティやヴァスクスみたいな現代音楽だけじゃなくバッハ、そして特にモーツァルトのレクイエムというキャッチーな楽曲が入っているので、親を誘って行くことができた。ちなみにプロの合唱団メインのコンサートに行くのは(記憶が曖昧だけど)たぶん初めて。個人的にはタリス・スコラーズに早く行きたいんですが、次回の来日はまだかしら。

・演奏の感想としては期待通りめちゃくちゃ良かった。これでS席6,000円、しかも後半はオケ付き…というのは「いいんすか!?」って感じだけど、客席も八割~九割くらい埋まっていたし良い価格設定なのかも。当の私はコンサート前に近所のアサヒでビールの飲み比べをしていたので(は?)、バッハは寝落ちしないように目をギンギンに開いて聴いていた。パートの隊形は前列に女声、後列の男声。これはヴァスクスとモーツァルトも同じ。ちなみにアサヒのビールは蔵前WHITEがめちゃくちゃ美味しくて、ビールの新しい扉を開いてしまった。

・バッハが終わると半数ほどが舞台袖に退場し、女声8名、男声9名が左右一列に並ぶ隊列に変形。リゲティの「ルクス・エテルナ」は1-2人1パートくらいに聞こえた。少人数の合唱にもかかわらず幅の狭い和音が物凄く綺麗に響き渡っていて、とにかく感動した。こんなレベルのアンサンブルはもうしばらくお目にかかれないかも……。というわけで、(記憶のかぎり)初めて聴くトーン・クラスターの生演奏がこれで良かったなあ、と思う。そういえば、親は「本願寺のお経を思い出した」と言っていた。実際、はっきりした旋律があるというより、音が少しずつ重なったり切り替わったりして展開していくように聞こえたから、そういう感想にもなるかもしれない。ちなみに、本願寺の集団読経(?)に一回遭遇したことがあるけど、発声がなかなかすごく、倍音がガンガン聞こえてくるので一聴の価値あり(私は一体何を勧めているのか)。そういえば、ルクス・エテルナの演奏途中で音叉を取り出して音を確認している人がいて、「なんかすごいことやってるな…音取りしたからって僕にはできないだろうな…」と思った。

・ヴァスクスの曲はラトヴィアの故郷の精神が根ざす自然と文化の交わりのようなテーマが根底にあるらしく、昔のラトヴィアでは娘に鳥の名前をつける風習があったという解説も面白かった(今ではちょっと古臭く聞こえるらしく、その辺りの郷愁が「私たちの母の名」という曲名に重ねられている)。日本で言う菊、桜、梅みたいなものかしら。実際の曲を聴いてみると、現役の作曲家による作品とはいえ曲調は非常に聞きやすく、短調フォルテの力強い和音が提示部と再現部の目印になっている構成も掴みやすい。「せっかく背景や解説が面白いのだから、歌詞の全訳か抄訳がプログラムにあれば最高だったなあ」とも思ったり。あと、歌が終わる頃に鳥たちの鳴き声(録音かな?)が流れていたのも印象的。

・ここまでの演奏が一時間ほどで、それから短い休憩の後、新日本フィルとソリストが加わってモーツァルトへ。モーツァルトはいつも通りのモーツァルト。レクイエムにもルクス・エテルナがあるのだけど、やっぱり時代も作曲家も違えば楽想も全然違うんだなあと思った。一番好きなのは相変わらずラクリモーサ。

・アンコールはソリストが合唱隊に混ざり、メンバーの一人が日本語で一言二言の挨拶と「「ウクライナへの祈り」を歌います」と述べて、歌っておしまい。初めて聴いた曲で、演奏もとても良かった。後で調べてみたら、このご時世だから演奏している団体もちらほらあるみたい。祈りも音楽の大切な仕事だなあ、と改めて思ったり。

・すみだトリフォニーホールは前に一階来たことがあるけど、改めてとても響きの良いホールだなあと思った。ただ、ホール一階前方ブロックの真ん中辺りのチケットを取ったのだけど、モーツァルトのオケの音は一階後方か二階で聴いても良かったかな…と思いながら聴いていた。また違う席で聴いてみたいな。

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