【概要】
▶007シリーズ
007シリーズは元諜報員の小説家イアン・フレミングの小説に基づく映画シリーズであり、秘密情報部のMI6に属するジェームズ・ボンドを主人公としている。1960年から制作された映画シリーズはショーン・コネリー演じる軽妙洒脱なエージェント像によって従来の保守的な紳士階級のイメージを覆し、スウィンギング・ロンドン以降の感性から強い支持を獲得した。その後、007シリーズは主演俳優や監督の交代を繰り返しながら国民的シリーズに成長したが、1990年代のピアース・ブロスナンの主演を皮切りに本格的なアクションとシリアスな状況設定を重視する作風に転換し、ミッション・インポッシブルやボーンアイデンティティと共にミレニアル世代を代表するスパイ・アクション映画シリーズとなった。
▶紳士的趣味
ボンドの洗練された教養と感性は初期の頃から一つの見所として描かれてきた。古い作品では敵のリーダーに振る舞われた酒の年代にケチをつけたり、CIAに対してサヴィル・ロウ製のスーツを自慢したりという(カッコいいというよりは)スノッブめいた振る舞いがお決まりの笑いどころとして用意されていた。近年の作品ではこうしたボンドの趣味の描写が本格化しており、時計や衣服、自動車といったアイテムに関して高級ブランドとのコラボレーションがPRされるようになった。その結果、今の007は言わばラグジュアリー映画として話題を集めるシリーズにもなっている。
▶ボンド・ガール
ボンドは1960年代に人物造形がなされたこともあり、その原型に近い作品ほどミソジニーの傾向が見て取れるという点は制作陣の内外でしばしば議論になってきた。この点は近年の007シリーズの中でも大きく変化してきた部分であり、特にボンドのミソジニーを文化的規範ではなく人格的問題として指摘しながらジュディ・デンチのMと対決させたピアース・ブロスナン世代や、ボンドの感情的コミットメントの深化と「ボンド・ガール」の意味の再構築によって現代化されたダニエル・クレイグ世代ではそれが(単なる旧作の価値観の否定ではなく)007シリーズとしての見所の一つに昇華されている。
【作品一覧】
★★★★☆ 映画館に見に行ってもいいと思った作品
▶ダニエル・クレイグ
・『スペクター』(2015年、サム・メンデス監督)
ボンドはMのビデオメッセージに従って単独でスペクターの手がかりを掴む。他方、スペクターはMI5を通してMI6の解体と各国の諜報機関の情報網の掌握を狙う。
・『スカイフォール』(2012年、サム・メンデス監督)
MI6が爆破され、世界各地で活動する諜報員の情報が暴露される。主犯は元MI6諜報員のシルヴァであり、その目的は冷戦期に自身を切り捨てMへの復讐であった。
★★★☆☆ 有料レンタルしてもいいと思った作品
▶ダニエル・クレイグ
・『カジノ・ロワイヤル』(2006年、マーティン・キャンベル監督)
テロ組織から預かった金を投資で増やしていたル・シッフルは、爆破テロを利用した不正取引をボンドに防がれる。窮地に陥ったル・シッフルを追って、ボンドは巨額のポーカーゲーム「カジノ・ロワイヤル」に参加する。
・『慰めの報酬』(2008年、マーク・フォースター監督)
ボンドは「カジノ・ロワイヤル」事件の裏にいたホワイトを追う中で、天然資源のためにボリビアでのクーデターを目論むスレイトという人物が浮かび上がる。しかし、スレイトは英国政府やCIAの要人と癒着していた。
▶ピアース・ブロスナン
・『ゴールデンアイ』(1995年、マーティン・キャンベル監督)
ソ連崩壊前夜の作戦において、ボンドは任務の成功と引き換えに006のアレックを見捨てる。作戦を生き延びたアレックはロシアの犯罪組織を率いて衛星EMP兵器ゴールンアイを奪取し、英国金融経済の破壊を目論む。
▶ティモシー・ダルトン
・『消されたライセンス』(1989年、ジョン・グレン監督)
ボンドはCIAの親友フェリックスと協力して麻薬王サンチェスを逮捕する。しかしサンチェスは護送車から逃亡し、報復にフェリックスを瀕死状態にし、その花嫁を殺害する。事件を受けたボンドはMI6の辞任を宣言し、復讐に向かう。
▶ロジャー・ムーア
・『私を愛したスパイ』(1977年、ルイス・ギルバート監督)
核戦争の勃発と海底国家の建設を目指す海洋学者が英ソの原子力潜水艦を奪取する。ボンドはソ連の諜報員トリプルXと共同で任務に当たるが、トリプルXはボンドによって恋人を殺害された過去を持っていた。
★★☆☆☆ 無料で見る分にはいいと思った作品(あらすじは省略)
▶ダニエル・クレイグ
・『ノー・タイム・トゥ・ダイ』(2021年、キャリー・ジョージ・フクナガ監督)
▶ピアース・ブロスナン
・『ダイ・アナザー・デイ』(2002年、リー・タマホリ監督)
・『トゥモロー・ネバー・ダイ』(1997年、ロジャー・スポティスウッド監督)
▶ティモシー・ダルトン
・『リビング・デイライツ』(1987年、ジョン・グレン監督)
▶ロジャー・ムーア
・『ユア・アイズ・オンリー』(1981年、ジョン・グレン監督)
▶ジョージ・レーゼンビー
・『女王陛下の007』(1969年、ピーター・ハント監督)
★☆☆☆☆ 見ても見なくてもよかった作品(あらすじは省略)
▶ピアース・ブロスナン・『ワールド・イズ・ノット・イナフ』(1999年、マイケル・アプテッド監督)
▶ロジャー・ムーア
・『美しき獲物たち』(1987年、ジョン・グレン監督)
・『オクトパシー』(1983年、ジョン・グレン監督)
・『ムーンレイカー』(1979年、ルイス・ギルバート監督)
・『黄金銃を持つ男』(1974年、ロジャー・ムーア監督)
・『死ぬのは奴らだ』(1973年ロジャー・ムーア監督)
▶ショーン・コネリー
・『ダイヤモンドは永遠に』(1971年、ガイ・ハミルトン監督)
・『007は二度死ぬ』(1967年、ルイス・ギルバート監督)
・『サンダーボール作戦』(1965年、テレンス・ヤング監督)
・『ゴールドフィンガー』(1964年、ガイ・ハミルトン監督)
・『ロシアより愛をこめて』(1963年、テレンス・ヤング監督)
・『ドクター・ノオ』(1960年、テレンス・ヤング監督)