2022年7月31日

英詩和訳|シェイクスピア『ソネット集』第16歌

 

しかしなぜ君はより強力な手を打って

時間という血まみれの暴君と戦わないのか。

なぜ君は老いに対して守りを固める上で

僕の不毛な韻律よりも恵まれた手段を取らないのか。

今の君は幸せな時期の頂点に立っており

多くの乙女の庭園が手付かずのまま

君のために生きた花を生もうという有徳な願いを抱いている。

それは絵に描いた君の身代わりよりも遥かに君と似た花だ。

すなわち、命を繕うべきものは命の詩行なのだ。

ここにある時間の絵筆や僕の見習いのペンでは

内面の立派さにおいても外面の綺麗さにおいても

君のことを人々の目の中に生かし続けることはできない。

君自身を譲り渡すことが君自身を手元に留めるのだ。

君自身の麗しい技術が描けば、君はずっと生きるはずだ。


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英詩和訳|シェイクスピア『ソネット集』第15歌


僕は考えるのだ、成長していく全ての事物が

完全な姿を保つもの束の間であることや

この巨大な舞台が見せるものが

星々が密かな影響力で作り出す芝居に過ぎないことを。

僕は感じるのだ、人間も植物と同じように生い茂り

同じ一つの空に励まされたり邪魔されたりしながら

青春の蜜を誇るに至るも、伸びた後には枯れ始め

華やかな姿を失って忘れ去られていくことを。

こうした無常の逗留について想像していると

青春の豊かさを極める君が目に浮かぶが

その傍らでは浪費家の時間が老衰と共に議論をして

君の青春の昼を汚れた夜に変えようとしている。

万物は君への愛のために時間と戦争をしているのだ。

時間が君から奪うのなら、僕は新たな接ぎ木をしよう。


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2022年7月30日

音楽史メモ|イングランド(1)中世音楽

【作曲家と楽派

▶フィンクルの聖ゴドリック
 Godric of Finchale (c.1070-1170)
・ノーフォークのウォルポール出身。
・貿易商として成功したが、ダラムのフィンクルで隠者の道に入った。
・ダラムの教会や修道会の活動に携わる中で聖歌を制作した。

▶セイラム聖歌(ソールズベリー聖歌)
 Sarum Chant / Salisbury Chant (1078-1547)
・ノルマン・コンクエスト後にソールズベリーで整備された典礼。
・国内随一の典礼様式として名高く、後世の多声音楽にも利用された。
・宗教改革に伴い廃止され、オックスフォード運動で復興が試みられた。

▶リオネル・パワー
 Leonel Power (1370-1445)
・ケントのカンタベリー出身。
・クライストチャーチ小修道院の音楽関係の仕事を担っていた可能性がある。
・オールドホール写本に名前を連ねる主要作曲家の一人。
・後期にはシャンソンの影響を受け、高音に主旋律を置くようになった。

▶ジョン・ダンスタブル
 John Dunstable (1385-1453)
・伝記的資料に乏しく、出身は不明。
・ベッドフォード侯爵に仕え、フランスへ随行した可能性がある。
・アルス・ノヴァの技法を継承し、イソリズムを採用した。
・三和音を活用する傾向は「イングランド風」と呼ばれて大陸に影響を与えた。
・数学と天文学にも長けていたと言われる。

音源】

▶イングランドの中世歌曲──12世紀と13世紀
 English Medieval Songs: The 12th & 13th Centuries
・カタログ情報
 Lyrichord Early Music (LEMS8005)
・主な演奏者
 ラッセル・オバーリン(カウンター・テナー)
 シーモア・バラブ(ヴィオール)

▶セイラム聖歌──鶏鳴のミサ
 Sarum Chant: Missa in Gallicantu
・カタログ情報
 Gimell (CDGIM017)
・主な演奏者
 タリス・スコラーズ
 ピーター・フィリップス(指揮)

▶オールドホールの響き
 Echoes of an Old Hall
・カタログ情報
 Linn Records (CKD644)
・主な演奏者
 ゴシック・ヴォイセズ

▶ダンスタブル:甘美なるハーモニー──ミサ曲とモテット集
 Sweet Harmony: Masses and Motets
・カタログ情報
 Naxos (8.557341)
・主な演奏者
 トーヌス・ペレグリヌス
 アンソニー・ピッツ(指揮)

英詩和訳|シェイクスピア『ソネット集』第14歌


僕の判断は星々から引き出したものではないが

僕にも占星術の心得があるとは思っている。

それが告げるのは幸運でも不運でもなく

疫病でも飢饉でも季節の良し悪しでもない。

僕には数分先の運命を教えることも

各々の人に待つ雷や雨や風を示すことも

王侯たちに行く末の吉凶を語るために

天に重ねて現れる予兆を見つけることもできない。

僕が知識を取り出すのは君の瞳からであり

その二つの恒星を読む占いの技はこう告げている。

もし君が心を改めて君自身から蓄えを作るなら

真実と美は共に栄え続けるだろう、と。

そうしないつもりなら予言しておこう

君の終わりが真実と美の滅びと終焉になるだろう、と。


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2022年7月29日

英詩和訳|ダンテ・ロセッティ『命の棲む家』序歌


ソネットは一瞬のための記念碑だ。

それは魂の永遠から

死んだ不死のひと時に贈られる記念品だ。

ご覧、清めの儀式であっても凶事の警告であっても

それは自らの燃えるような充実を崇めている。

ソネットは象牙か黒檀に刻むものだ

昼か夜が統べるのに応じて。そして時間に

東西の真珠をあしらったその兜を見せるのだ。

ソネットは一枚の硬貨だ。表面が見せるのは

魂であり──裏面が見せるのは魂を支える力の正体だ。

この硬貨は生命の威厳ある召喚に応じる奉納金や

愛の高潔な従者が携える持参金に使うものだ。

あるいは暗い波止場の虚ろな息吹きに包まれながら

死への渡し賃としてカロン*の手に握らせるものだ。


*「カロン」

ギリシア神話に登場する冥界の川の渡し守。死者は渡し賃を支払ってカロンの舟に乗るとされる。


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Project Gutenberg|The House of Life by Dante Gabriel Rossetti


英詩和訳|シェイクスピア『ソネット集』第13歌


ああ!君が君のままなら。しかし愛しい人よ、

君が君のものなのは、君がここで生きる間だけだ。

近づいてくる終わりに備えて

君はその麗しい容姿を誰かに譲っておくべきだ。

そうすれば、君が借りて手元に置いている美の

返済期限もなくなるだろう。そして君は

君自身が死んだ後で再び君自身となるのだ

君の麗しい子が君の麗しい形を継ぐことで。

これほどに綺麗な家を誰が朽ちさせるのか。

この家は名誉ある管理作業がなされれば

冬の日の嵐のような強風にも

死の永遠の冷気の不毛な猛威にも耐えるだろう。

ああ!大切な愛しい人よ、君はただの散財人ではないか。

君には父がいるだろう。君の息子にもそう言わせてくれ。


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2022年7月28日

英詩和訳|シェイクスピア『ソネット集』第12歌


時計が時間を告げるのを数えながら

華やかな昼が恐ろしい夜に沈むのを見る時

菫が春を越して

黒豹色の巻き毛が白銀に染まるのを目にする時

聳え立つ木々から

熱から獣の群れを守る天蓋であった葉が落ちる様や

夏を緑に染めた麦がみな束ねられ

白髭を蓄えて荷車の上に積まれる様を見る時

僕は君の美について疑問が浮かぶのだ。

君も時が費やすものに加わるしかないのか、と。

麗しいものや美しいものは自分を捨てて

他のものが育つのを見ながら死に絶えていく。

時間が君をここから連れ去ろうとする時に

時間と対峙してその鎌を防げるのは血筋だけなのだ。


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2022年7月27日

英詩和訳|シェイクスピア『ソネット集』第11歌

 

君は衰えるのと同じ速さで育つだろう

君が後に残していく子供の中で。

若いうちに瑞々しい血を授けておけば

君が青春を離れてもその血を君の血だと言える。

この道には知恵と美と繁栄が宿り

その外には愚かさと老いと冷たい衰えが宿る。

人がみな君と同じ考えなら、時代は止まり

六十年で世界は消え去っただろう。

自然が貯めておくために作ったのではない

残酷で美点もない粗暴な人々は何も残さず滅びるがいい。

ご覧、自然は誰に最もよく恵み、より多く与えただろうか。

君はその惜しみない賜物を惜しみなく世話すべきなのだ。

自然がその印璽として君を彫った狙いは

君がより多くの印を刻み、その型を絶やさないことにある。


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英詩和訳|シェイクスピア『ソネット集』第10歌

 

誰かに愛を抱くことを拒むとは恥ずかしい。

君は自分自身の行く先を考えていないのだ。

確かに、君は望むなら多くの人々に愛されるだろうが

君が誰一人愛さないことは何よりも明らかだ。

君は殺人的な憎しみに取りつかれているために

自分自身を謀殺することを思い止まる気がなく

美しい屋根の崩落を待っているのだが

その修繕こそ君が第一に望むべきものなのだ。

ああ!君が考えを改めるなら、僕も考えを改めよう。

憎しみは優しい愛よりも綺麗な住人だろうか。

自分の姿に違わない慈しみと優しさを持つか

せめて自分自身には心優しいことを示してくれ。

僕への愛があるならもう一人の君を作ってくれ

君と君の子供の中に美が生き続けるように。


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2022年7月26日

羅詩和訳|カトゥルス『詩集』第2歌

 

雀よ*、僕の愛する乙女のお気に入りよ

彼女はよくお前と共に遊び、お前を懐に入れ

何かを欲しがるお前に指先を出して

鋭くつつかせてせている。

僕の煌めく愛しい人が

戯れに興じる訳を僕は知らないが

思うに、彼女は自分の苦しみを癒して

深い熱情を落ち着かせようとしているのだ。

僕も彼女のようにお前と戯れて

悲しい心の悩みを軽くできたならいいのに。

それは僕を惹きつけるのだ、まるであの物語の中で

俊足の乙女*を惹きつけて

久しく締められていた帯を解いた黄金の林檎のように。


*「雀」

古代ローマには雀をペットにする習慣があった。

*「俊足の乙女」

ギリシア神話に登場する狩人アタランテのこと。求婚者には競走で自分に勝つことを要求し、敗れた者は殺害した。オウィディウスによれば、アタランテは求婚者ヒッポメネスが用意した黄金の林檎に気を引かれて競争に敗れ、その妻となった。


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Gutenberg|The Carmina of Caius Valerius Catullus by Gaius Valerius Catullus


英詩和訳|シェイクスピア『ソネット集』第9歌


瞳を濡らす未亡人の瞳が恐れているのは

君が独り身の生に身を費やすことだろうか。

ああ!もし君が子供を持たずに死んでしまったら

世界は連れを失くした妻のように君を悼むだろう。

世界は君の未亡人となり、嘆き続けるのだ

君が君の形を後に残していかなかったことを。

一人一人の未亡人子供の眼差しのおかげで

夫の姿を心に留めることができるというのに。

この世にある散財というものを見ても

場所が変わるだけで世界の享受する分は変わらない。

しかし、美の浪費は世界の中でも終わりを持つものであり

使われないように使う者は美を滅ぼすことになる。

他の人々への愛が胸の内になければ

自分に対して恥ずべき殺人を犯すことになるのだ。


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2022年7月25日

英詩和訳|シェイクスピア『ソネット集』第8歌

 

耳を奪う音楽よ、なぜ悲しそうに音楽を聞くのか。

麗しきは麗しきと争わず、喜びは喜びを楽しむものだ。

なぜ君は君の愛するものを喜ばずに受け取り

なぜ自分を悩ませるものを快く受け取るのか。

よく整えられた音からなる真実の協和が

婚姻を結んで君の耳を傷つけるのは

音が君のことを叱っているからだ

担当すべき声部を潰している独り身の君のことを。

一つの弦がもう一つの弦の麗しい夫となり

代わる代わるお互いを鳴らし合う様子を見てごらん。

弦たちは父親と子供と幸せな母親に似て

みなが一体になり、一つの快い音色を歌っている。

その言葉のない歌声は一つに思える多くの声で

君に歌っている、「君の一は無に等しい」と。


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2022年7月22日

英詩和訳|シェイクスピア『ソネット集』第7歌

 

ご覧!東の方角に恵み深い光明が

燃える頭を起こすと、下々の瞳は

その新たに現れつつある姿に臣従を誓い

その神聖な王権に眼差しをもって仕える。

光明が天空に聳え立つ山を登りきっても

その壮年には力強い青春の面影があるため

命かぎりある眼差したちもその美に感動し続け

その黄金の巡礼に随行しようとする。

しかし、頂上にあった光明が軋む車と共に

老年のように昼からよろめき降りてくると

かつて忠実だった瞳たちも、今や心変わりし

その低い歩みとは別の方を向いてしまう。

君も子供を持たなければ、やがて正午を通り過ぎ

見向きもされずに死ぬことになるだろう。


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英詩和訳|シェイクスピア『ソネット集』第6歌


それゆえ、冬の荒れた手に君の中にある君の夏を

汚させてはいけない、君が蒸留されるまでは。

麗しい小瓶を作り、君を美の財宝と共に

隠してくれ、その財宝が自害するまでに。

君の金貸しは違法な高利貸しとは違って

嬉しい借金で返済する人々を幸せにする。

それは君が君をもう一人増やすことであり

一人が十人になれば幸せも十倍になるだろう。

君自身も今の君よりも十倍幸せになるだろう

君の十人の子供が君を十回も再現してみせるなら。

死に何ができるだろうか、もし君が世を去る時に

子孫の中に生きた君を残していくなら。

我儘は止めてくれ、君は美しすぎるのだ

死の戦利品となり蛆虫を相続人とするには。


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羅詩和訳|カトゥルス『詩集』第1歌


誰に贈ろうか、この素敵な新しい本を

乾いた軽石で磨いたばかりの小品を。

コルネリウス*、君に贈るよ。なぜなら君はよく

僕の戯れ言を一廉のものだと評価してくれたからだ。

あの頃は君こそ、ただ一人でイタリアの人々の

通史を三巻の書物*に描き出そうとしていたというのに。

あれはユピテルにかけて教養と勤勉を湛えた書物だ。

ここにあるものは何でも貰ってくれ、この本にあるなら

どんなものでも。そして庇護者の乙女*に願おう、

それが一つの世代を超えて残りますようにと。


*「コルネリウス」

同時代の作家コルネリウス・ネポスのこと。

*「三巻の書物」

ネポスの史書『年代記』のこと。散逸している。

*「庇護者の乙女」

技芸を司るミネルヴァのこと。


▶原文(パブリック・ドメイン)

Gutenberg|The Carmina of Caius Valerius Catullus by Gaius Valerius Catullus


2022年7月21日

英詩和訳|シェイクスピア『ソネット集』第5歌


時の流れが丁寧な仕事で形作った

愛らしい眼差しに皆の目は釘付けだが

時の流れはその眼差しを虐げる暴君でもあり

麗しさで勝るものから麗しさを奪っていく。

決して休むことのない時間は夏を

恐ろしい冬へと連れ込み、その中で打ち砕く。

樹液は霜に固まり、鮮やかな葉は散り尽くし

美は雪に覆われ、あらゆる場所が荒れ果てる。

それゆえ、夏の蒸留液を残して

液状の囚人をガラスの壁で囲わなければ

美しいものの力は美しいものと共に奪い去られ

美しいものも美しいものの記憶も残らないだろう。

蒸留された花々が冬と遭遇して失うのは

外見だけであり、その本質は麗しく生き続けるのだ。


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鑑賞記録|映画|007シリーズ

【概要】

▶007シリーズ

007シリーズは元諜報員の小説家イアン・フレミングの小説に基づく映画シリーズであり、秘密情報部のMI6に属するジェームズ・ボンドを主人公としている。1960年から制作された映画シリーズはショーン・コネリー演じる軽妙洒脱なエージェント像によって従来の保守的な紳士階級のイメージを覆し、スウィンギング・ロンドン以降の感性から強い支持を獲得した。その後、007シリーズは主演俳優や監督の交代を繰り返しながら国民的シリーズに成長したが、1990年代のピアース・ブロスナンの主演を皮切りに本格的なアクションとシリアスな状況設定を重視する作風に転換し、ミッション・インポッシブルやボーンアイデンティティと共にミレニアル世代を代表するスパイ・アクション映画シリーズとなった。

▶紳士的趣味

ボンドの洗練された教養と感性は初期の頃から一つの見所として描かれてきた。古い作品では敵のリーダーに振る舞われた酒の年代にケチをつけたり、CIAに対してサヴィル・ロウ製のスーツを自慢したりという(カッコいいというよりは)スノッブめいた振る舞いがお決まりの笑いどころとして用意されていた。近年の作品ではこうしたボンドの趣味の描写が本格化しており、時計や衣服、自動車といったアイテムに関して高級ブランドとのコラボレーションがPRされるようになった。その結果、今の007は言わばラグジュアリー映画として話題を集めるシリーズにもなっている。

▶ボンド・ガール

ボンドは1960年代に人物造形がなされたこともあり、その原型に近い作品ほどミソジニーの傾向が見て取れるという点は制作陣の内外でしばしば議論になってきた。この点は近年の007シリーズの中でも大きく変化してきた部分であり、特にボンドのミソジニーを文化的規範ではなく人格的問題として指摘しながらジュディ・デンチのMと対決させたピアース・ブロスナン世代や、ボンドの感情的コミットメントの深化と「ボンド・ガール」の意味の再構築によって現代化されたダニエル・クレイグ世代ではそれが(単なる旧作の価値観の否定ではなく)007シリーズとしての見所の一つに昇華されている。

【作品一覧】

★★★★☆ 映画館に見に行ってもいいと思った作品 

▶ダニエル・クレイグ
・『スペクター』(2015年、サム・メンデス監督)
ボンドはMのビデオメッセージに従って単独でスペクターの手がかりを掴む。他方、スペクターはMI5を通してMI6の解体と各国の諜報機関の情報網の掌握を狙う。

・『スカイフォール』(2012年、サム・メンデス監督)
MI6が爆破され、世界各地で活動する諜報員の情報が暴露される。主犯は元MI6諜報員のシルヴァであり、その目的は冷戦期に自身を切り捨てMへの復讐であった。

★★★☆☆ 有料レンタルしてもいいと思った作品

▶ダニエル・クレイグ
・『カジノ・ロワイヤル』(2006年、マーティン・キャンベル監督)
テロ組織から預かった金を投資で増やしていたル・シッフルは、爆破テロを利用した不正取引をボンドに防がれる。窮地に陥ったル・シッフルを追って、ボンドは巨額のポーカーゲーム「カジノ・ロワイヤル」に参加する。

・『慰めの報酬』(2008年、マーク・フォースター監督)
ボンドは「カジノ・ロワイヤル」事件の裏にいたホワイトを追う中で、天然資源のためにボリビアでのクーデターを目論むスレイトという人物が浮かび上がる。しかし、スレイトは英国政府やCIAの要人と癒着していた。

▶ピアース・ブロスナン
・『ゴールデンアイ』(1995年、マーティン・キャンベル監督)
ソ連崩壊前夜の作戦において、ボンドは任務の成功と引き換えに006のアレックを見捨てる。作戦を生き延びたアレックはロシアの犯罪組織を率いて衛星EMP兵器ゴールンアイを奪取し、英国金融経済の破壊を目論む。

▶ティモシー・ダルトン
・『消されたライセンス』(1989年、ジョン・グレン監督)
ボンドはCIAの親友フェリックスと協力して麻薬王サンチェスを逮捕する。しかしサンチェスは護送車から逃亡し、報復にフェリックスを瀕死状態にし、その花嫁を殺害する。事件を受けたボンドはMI6の辞任を宣言し、復讐に向かう。

▶ロジャー・ムーア
・『私を愛したスパイ』(1977年、ルイス・ギルバート監督)
核戦争の勃発と海底国家の建設を目指す海洋学者が英ソの原子力潜水艦を奪取する。ボンドはソ連の諜報員トリプルXと共同で任務に当たるが、トリプルXはボンドによって恋人を殺害された過去を持っていた。

★★☆☆☆ 無料で見る分にはいいと思った作品(あらすじは省略)

▶ダニエル・クレイグ
・『ノー・タイム・トゥ・ダイ』(2021年、キャリー・ジョージ・フクナガ監督)

▶ピアース・ブロスナン
・『ダイ・アナザー・デイ』(2002年、リー・タマホリ監督)
・『トゥモロー・ネバー・ダイ』(1997年、ロジャー・スポティスウッド監督)

▶ティモシー・ダルトン
・『リビング・デイライツ』(1987年、ジョン・グレン監督)

▶ロジャー・ムーア
・『ユア・アイズ・オンリー』(1981年、ジョン・グレン監督)

▶ジョージ・レーゼンビー
・『女王陛下の007』(1969年、ピーター・ハント監督)

★☆☆☆☆ 見ても見なくてもよかった作品(あらすじは省略)

▶ピアース・ブロスナン
・『ワールド・イズ・ノット・イナフ』(1999年、マイケル・アプテッド監督)

▶ロジャー・ムーア
・『美しき獲物たち』(1987年、ジョン・グレン監督)
・『オクトパシー』(1983年、ジョン・グレン監督)
・『ムーンレイカー』(1979年、ルイス・ギルバート監督)
・『黄金銃を持つ男』(1974年、ロジャー・ムーア監督)
・『死ぬのは奴らだ』(1973年ロジャー・ムーア監督)

▶ショーン・コネリー
・『ダイヤモンドは永遠に』(1971年、ガイ・ハミルトン監督)
・『007は二度死ぬ』(1967年、ルイス・ギルバート監督)
・『サンダーボール作戦』(1965年、テレンス・ヤング監督)
・『ゴールドフィンガー』(1964年、ガイ・ハミルトン監督)
・『ロシアより愛をこめて』(1963年、テレンス・ヤング監督)
・『ドクター・ノオ』(1960年、テレンス・ヤング監督)


2022年7月20日

英詩和訳|シェイクスピア『ソネット集』第4歌


愛らしい浪費家よ、なぜ君は

その美の遺産を一人で使ってしまうのか。

自然の家督は与えるものではなく貸すものであり

自然は惜しまない人にこそ惜しみなく貸すのだ。

それならば美しい吝嗇家よ、なぜ君は使い損ねるのか

与えるために与えられた大盤振る舞いの賜物を。

稼ぎの悪い金貸しよ、なぜ君は使ってしまうのか

一生かけても使い切れない巨万の富を。

君は自分一人としか取引をせず

麗しい君自身を自ら騙しているのだ。

君は自然に召されてこの世を去る時に

どれほど立派な帳簿を残せるというのか。

君の美は使われなければ君と共に墓に入るしかないが

使われるなら相続人の中で生き続けるだろう。


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英詩和訳|シェイクスピア『ソネット集』第3歌


君の鏡を見て、その目に映る顔に伝えてくれ

今こそ、その顔がもう一つの顔を形作る時だと。

その顔の瑞々しい状態を今作り直さなければ

君はこの世を欺き、母になる人の祝福を奪うことになる。

どれほど綺麗な女でも、まだ穂の実っていない胎を

君の鋤に耕されて恥と思うことはないだろう。

どれほど愚かな男でも、その身を

自己愛の墓として子孫を絶やすことはないだろう。

君は君の母親の鏡であり、君の母親も君を見ては

春の盛りの愛らしい四月を思い出すことだろう。

君もそうすれば、老いて皺ができても

その窓越しに今と同じ黄金時代を見ることだろう。

しかし思い出されることなく生き抜きたいのなら

独りで死に、君の姿を君の道連れにすることだ。


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Open Source Shakespeare|Sonnet 3


2022年7月19日

英詩和訳|シェイクスピア『ソネット集』第2歌


四十の冬たちが君の額を包囲して

君の美の領野に深い塹壕を掘れば

今はまだ人の目を引く君の青春の見事な衣装も

僅かな値打ちのぼろ布に変わるだろう。

そして君は問われるのだ。「お前の美はどこに行ったのか

お前の官能の日々の財宝は一体どこに行ったのか」と。

「深く窪んだ瞳の奥にあります」と言い返すことは

見境のない恥晒しであり、褒め言葉の無駄遣いだ。

君の美の使い道としてどれほど称賛されるだろうか

もし君が「この綺麗な私の子が私の帳尻を合わせ

私の老いを釈明するでしょう」と答えながら

自分の美を相続した君の子の美を示すとしたら!

そこで君は老いていくと共に新しく作り直され

自分の冷えた血を感じながら自分の温かい血を見るのだ。


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Open Source Shakespeare|Sonnet 2


英詩和訳|シェイクスピア『ソネット集』第1歌


最も麗しい生き物が増えることを僕らが望むのは

そうすれば美の薔薇が死に絶えることはなくなり

熟れたものが時と共に朽ちていっても

若い跡継ぎがその記憶を伝えていけるからだ。

それなのに君は自分の光輝く瞳と婚約して

その明かりの炎を養うために君自身を焚き木とし

豊穣が宿るところに飢饉をもたらしている。

君こそが麗しい君自身の残酷すぎる敵なのだ。

今の君はこの世の瑞々しい装飾であり

華やかな春を伝える唯一無二の使者だが

自分の身を自分の蕾の中にうずめることは

若き吝嗇家よ、倹約による浪費なのだ。

この世に情けをかけてくれ。さもなくば大食の罪人だ

墓場と君とでこの世の取り分を食らうのだから。


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Open Source Shakespeare|Sonnet 1


2022年7月18日

映画メモ|アルフレッド・ヒッチコック監督作品

 【概要】

▶ヒッチコック監督

アルフレッド・ヒッチコック(Alfred Hitchcock, 1899-1980)はイギリスを代表するサスペンス映画監督。サスペンス映画が大衆向けジャンルとして軽視されていたために十分に評価されていなかったが、ヒッチコックを敬愛するヌーヴェル・ヴァーグの監督たちの批評により名声を確立した。特に、トリュフォーとヒッチコックの長時間対談をまとめた『映画術』は映画の芸術的特徴と制作技術について充実したインタビューがなされており、映画学の古典的文献となっている。今回の記事は、『映画術』の記述と突き合わせながら未公開作品とプロパガンダ映画を除く全50作品を鑑賞しつつ、備忘録を兼ねて個人的なお気に入り度をリスト化したものになる。早速リストに入りたいところだが、その前に『映画術』でのヒッチコックの論述から、ヒッチコックの作品の楽しみ方一般に関わるポイントを三つ取り上げてまとめておく。

サスペンスとは何か

ヒッチコックによれば、サスペンスというジャンルは、犯人の正体や危険の接近が予め知らされた状態で、主人公たちがそれを回避したりそれに遭遇したりする「過程」を味わうものである。主人公たちを待ち受けるものについて観客が無知な状態にあるミステリーと対比すると、何が起こるのかというドキドキよりも、「その先には殺人鬼が…!」というハラハラの方に重きがあると言えるかもしれない。ただし、ヒッチコック映画はミステリー的な性格を持たないわけではないし、観客は結末を知らされるわけではないので、以下の一行あらすじでも深刻なネタバレは避けておいた。

フォルムで語ること

ヒッチコックは自身の映画の本質的特徴を映像あるいは形態(フォルム)によって語ることとしている。これは台詞などの言葉による説明をできるだけ排除し、画面を構成している視覚情報の連続によって語るということである(具体的な表現例は『映画術』に多く記されている)。この点は、ヒッチコックがサイレント映画の美術担当からキャリアを出発した人物であり、台詞に頼らない視覚表現の成熟を目にしてきた世代だという背景とも関わりが深い。ちなみに、ヒッチコックはサイレント時代の視覚表現への拘りがトーキー以降に衰えつつある点を嘆いている。

映画制作の目的

ヒッチコックは映画の目的を、劇場に集まった観衆を映像の連続によって最後まで釘付けにすること、と捉えている。これは何を意味するかというと、多くの人々が映像の移り変わりを最後まで楽しめたなら整合性は二の次でよい、ということである。この点についてヒッチコックは、プロットの論理を重視する批評は言わば小説向けの批評であってお門違いだ、と批判している。要するに、ヒッチコックは映像作品の映像面が正当に批評されることを望んでおり、これは先のフォルム重視の映画観にも通じているように思われる。ちなみに、ヒッチコックにインタビューをしているトリュフォーは批評家としても知られる人物だが、ここではヒッチコックに同意する形で、自分の映画批評が真っ当なものになったのは自ら映画製作に取り組んでからだ、と述べている。

【ヒッチコックの映画一覧】

・作品の並び順は評価が高い順を優先し、その中で公開された順に並べた。また、ヒッチコックの長いキャリアはイギリス時代のサイレント作品とトーキー作品、アメリカ時代のモノクロ作品とカラー作品で便宜的に区切ると分かりやすいので、その区切りを示す見出しもつけておいた。

★★★★★ 自分の家にDVDがあってもいい作品

▶アメリカ時代後期:カラー作品
・『裏窓』(1954)
 足を骨折したカメラマンが窓越しに事件の気配を察知する話。

★★★★☆ 映画館に見に行ってもいい作品

▶イギリス時代後期:トーキー作品
・『バルカン超特急』(1938)
 一緒に汽車に乗った婦人が消えたのに誰も目撃者がいない話。

▶アメリカ時代前期:モノクロ作品
・『海外特派員』(1940)
 アメリカの新聞記者が大戦前夜の平和活動家誘拐事件を追う話。
・『断崖』(1941)
 借金と虚言を重ねる結婚相手に殺人の疑惑を抱く話。

▶アメリカ時代後期:カラー作品
・『ロープ』(1948)
 優生思想の支持者が友人を殺し、その現場でパーティを開く話。
・『サイコ』(1960)
 横領を犯して消えた恋人を追って怪しい宿屋を訪れる話。
・『鳥』(1963)
 鳥が街中の人間を襲い始める話。

★★★☆☆ 有料レンタルしてもいい作品

▶アメリカ時代前期:モノクロ作品
・『レベッカ』(1940)
 名家の後妻となった主人公が亡き前妻レベッカの影に苦しむ話。
・『白い恐怖』(1945)
 白地の縞模様を見るとパニックを起こす精神科医の話。
・『汚名』(1946)
 愛する女性がナチ集団への潜入捜査のために結婚してしまう話。

▶アメリカ時代後期:カラー作品
・『知りすぎていた男』(1956)
 歌手と医者の夫婦が暗殺計画に巻き込まれ、子供を誘拐される話。
・『めまい』(1958)
 高所恐怖症の元警官が、友人から妻の尾行を頼まれる話。
・『北北西に進路を取れ』(1959)
 架空のスパイと間違われた男が命を狙われる話。
・『ファミリー・プロット』(1976)
 インチキ霊媒師とタクシー運転手のカップルが富豪の相続人を探す話。

★★☆☆☆ 無料で見る分にはいい作品

▶イギリス時代前期:サイレント作品
・『下宿人』(1927)
 連続殺人事件が起こる中、民宿に怪しい男が来る話。

▶イギリス時代後期:トーキー作品
・『恐喝』(1929)
 刑事の恋人が正当防衛で人を殺してしまう話
・『殺人!』(1930)
 女優が殺人の現行犯で逮捕されるも、記憶がない話。

▶アメリカ時代前期:モノクロ作品
・『パラダイン夫人の恋』(1947)
 殺人容疑をかけられた未亡人の弁護を引き受けて魅了される話。

▶アメリカ時代後期:カラー作品
・『見知らぬ乗客』(1951)
 電車で出会った男に交換殺人を持ちかけられ、妻を殺される話。
・『私は告白する』(1953)
 殺人の告白について沈黙を貫く神父が殺人容疑をかけられる話。
・『ダイヤルMを廻せ!』(1954)
 妻を殺害する依頼をするも、計画が失敗する話。
・『泥棒成金』(1955)
 足を洗った元宝石泥棒が自分の手口を真似た宝石泥棒を追う話。
・『間違えられた男』(1956)
 強盗として誤認逮捕された男が追い詰められる話。
・『マーニー』(1964)
 窃盗癖のある女が雇い主に捕まり、トラウマと対峙する話。

★☆☆☆☆ 見ても見なくてもよかった作品

▶イギリス前期時代:サイレント作品
・『快楽の園』(1925)
 恋人を追ってアフリカに行った歌手が事件に巻き込まれる話。
・『リング』(1927)
 ボクサーが一人の娘をめぐって対決する話。
・『ダウンヒル』(1927)
 友達をかばって退学した青年が世間をさまよう話。
・『農夫の妻』(1928)
 妻に先立たれた農場主が婚活する話。
・『ふしだらな女』(1928)
 不倫の濡れ衣を着せられた主人公が新天地に行く話。
・『シャンパーニュ』(1928)
 父と喧嘩した娘がどたばたする話。
・『マンクスマン』(1929)
 故郷を離れて亡くなったはずの恋人が帰郷する話。

▶イギリス時代後期:トーキー作品
・『ジュノーと孔雀』(1930)
 無職の父を抱えた貧しい家庭に遺産相続の話が来る話。
・『リッチ・アンド・ストレンジ』(1931)
 巨額の旅費を受け取った夫婦が旅先で事件に遭う話。
・『第十七番』(1932)
 アパートで倒れている男の謎を浮浪者と一緒に探る話。
・『ウィンナー・ワルツ』(1933)
 シュトラウス二世が恋人と音楽の間で揺れる話。
・『三十九夜』(1935)
 自室で女スパイが殺され、殺人犯として追われる話。
・『間諜最後の日』(1936)
 ドイツのスパイを追う中で、観光客を殺してしまう話。
・『サボタージュ』(1936)
 破壊活動に協力する劇場主が爆破事件に関与する話。
・『第3逃亡者』(1937)
 絞殺の濡れ衣を着せられた若者が盗まれたコートを探す話。
・『巌窟の野獣』(1989)
 難破船を略奪している集団の根城に宿泊してしまう話。

▶アメリカ時代前期:モノクロ作品
・『スミス夫妻』(1941)
 結婚が無効になった夫婦が痴話喧嘩する話。
・『逃走迷路』(1942)
 飛行機工場でのテロの犯人にされた主人公が真犯人を追う話。
・『疑惑の影』(1943)
 訪ねてきた伯父が逃走中の殺人犯であることに感づく話。
・『救命艇』(1944)
 ドイツ軍に砲撃された船から脱出した救命艇で漂泊する話。

▶アメリカ時代後期:カラー作品作品
・『山羊座のもとに』(1949)
 オーストラリアに駆け落ちした夫婦を立ち直らせる話。
・『舞台恐怖症』(1950)
 夫を殺した女優の代わりに追われる男をかばう話。
・『ハリーの災難』(1955)
 ハリーの死体が山で見つかり、関係者がどたばたする話。
・『引き裂かれたカーテン』(1966)
 鉄のカーテンの向こうに渡った科学者に恋人がついてくる話。
・『トパーズ』(1969)
 キューバ危機の調査のためにフランス人スパイがキューバに渡る話。
・『フレンジー』(1972)
 元妻を殺された男がネクタイ絞殺殺人の容疑者にされる話。

2022年7月17日

クラシックメモ|2023年にアニバーサリー・イヤーを迎える作曲家

 【没後400年】

ウィリアム・バード
 William Byrd (1540-1623)
・イングランドのエセックス出身の作曲家。
・イングランドのルネサンス音楽を代表する人物とされる。
・王室礼拝堂聖歌隊でタリスに師事したと考えられる。
・英国教会のために活動したが信仰はカトリックだった。
・宗教合唱や室内楽、鍵盤音楽の作品が特に知られる。

【生誕350年】

ジャック・オトテール
 Jacques-Martin Hotteterre (1674-1763)
・フランスのパリ出身の作曲家。
・管楽器の演奏者や製作者の多い家柄の出身者である。
・若い頃からローマで学び、「ル・ロマン」と呼ばれた。
・フルート奏者として成功し、1708年頃に王室に雇われた。
・フルートのための独奏曲と室内楽作品を多く残している。
・木管楽器の演奏指南書を著し、ヨーロッパで広く読まれた。

【生誕300年】

カール・フリードリヒ・アーベル
 Karl Friedrich Abel (1723-1787)
・ドイツのケーテン出身の作曲家。
・大バッハ率いるケーテン宮廷楽団の演奏者を父に持つ。
・大バッハの推薦でハッセ率いるドレスデン宮廷楽団に属した。
・1759年に渡英し、残りの生涯をイングランドで過ごす。
・ロンドンでJ.C.バッハと共催した定期演奏会が知られている。

【生誕200年】

エドゥアール・ラロ
 Édouard Lalo (1823-1892)
・フランスのリール出身のスペイン系の作曲家。
・前半生は作品が認められず、弦楽奏者として生計を立てた。
・後に作曲に専念し、サラサーテの演奏により成功を収めた。
・華麗でエキゾチックな作風を好んだ。

【生誕150年】

マックス・レーガー
 Max Reger (1873-1916)
・ドイツのバイエルン出身の作曲家。
・バイロイト音楽祭をきっかけに作曲家を志した。
・1907年からライプツィヒ大学の作曲教授を務めた。
・絶対音楽の立場を取り、優れたオルガン音楽を残した。

セルゲイ・ラフマニノフ
 Sergey Rachmaninov (1873-1943)
・ロシアのノブゴロド出身の作曲家。
・自作の演奏によってピアニストとしても名声を確立した。
・ロシア革命や二次大戦の際は欧米を活動拠点とした。
・ロマン派の作風を守りながら、叙情性と技巧を追求した。

【生誕100年】

中田喜直
 Yoshinao Nakada (1923-2000)
・日本の東京出身の作曲家。父は中田章。
・東京音楽学校(現・東京芸術大学)で橋本國彦に師事した。
・開戦によりパイロットに動員され、特攻隊として終戦を迎える。
・柴田南雄の新声会に加わる一方、NHKの番組にも携わる。
・1955年にろばの会を結成し、多くの童謡を発表した。
・1953年からフェリス女学院短期大学で教鞭を執った。
・1969年にサトウハチローらと共に日本童謡協会を設立した。
・父と同様に日本の四季に取材した作品が知られている。

ジョルジ・リゲティ
 György Ligeti (1923-2006)
・ルーマニアのトランシルヴァニア出身の作曲家。
・強制収容所から生還し、リスト・フェレンツ音楽大学に通った。
・コダーイ、カドシャ、ヴェレシュ、ファルカシュらに師事した。
・ハンガリー動乱の鎮圧を受けてオーストリアに亡命した。
・各地の大学やダルムシュタット夏期音楽講座で教鞭を執った。
・ミクロポリフォニーにより60年代前衛音楽の旗手となった。
・キューブリックの映画作品での使用も知られている。

レシピ|漬け物

【塩漬け】

▶胡瓜と茗荷の昆布漬け
・胡瓜と茗荷は輪切りのスライスにする。
・野菜の2%の量の乾燥昆布を細切りにする。
・材料と野菜の1%の塩を和えて漬ける。

【味噌漬け】

▶甘唐辛子
・唐辛子は大きめの輪切りにする。
・3%の塩水に30分漬けたら水気をよく切る。
・味噌:みりん=1:1で漬ける。

【甘酢漬け】

▶新生姜
・新生姜はそのままスライスにする。
・皮が気になるならスプーンで削ぐ。
・酢:砂糖=3:2に少量の塩を加えて漬ける。

【甘辛漬け】

▶ごぼう(細め)
・皮をそいで3cm程度に切り、15分水に浸す。
・出汁:砂糖:醤油:酢=2:2:1:1のつけだれを用意する。
・湯を沸かし、ごぼうを1分茹で、水気を切る。
・つけだれを火にかけ、沸騰したら火を切ってごぼうを入れる。
・鷹の爪を好みで入れて漬け込む。

2022年7月16日

英詩和訳|エドガー・アラン・ポー「大鴉」

▶エドガー・アラン・ポー

 Edgar Allan Poe (1809-1849)
・アメリカのボストン出身の詩人、小説家。
・怪奇小説や推理小説、純粋詩、美学書を著した。
・破滅的な生活を送ったため国内での評価は低かったが、ボードレールを始めとするフランスの象徴派詩人たちに支持された。
・「大鴉」(The Raven)は1845年にイブニング・ミラー紙に発表された詩で、当時からよく知られていた作品。恋人を失った語り手の部屋に大鴉が現れ、奇怪な言葉を発して語り手を一層深い悲嘆と狂乱に陥れていく様子が描かれている。

▶翻訳

「大鴉」

湿った夜更けのこと、疲れ果て、じっと考えていた
誰も覚えていないような奇怪な伝承を何冊も開いて──
うとうとしていると、不意に、こつこつ、と鳴った
誰かがそっと叩いた音、部屋の戸を叩いた音らしい。
「客かな」と僕はつぶやいた。「部屋の戸が鳴った──
   だがそれだけだ、何も起こらない。」

ああ、はっきり思い出した、凍てつく十二月だった。
消えそうな残り火たちが、床に幽霊を浮かべていた。
僕は夜明けを切に待ち──虚しく書物に頼っていた
悲しみが終わるように──レノアを失った悲しみが──
天使たちがレノアと呼ぶ、あの尊くて眩しい乙女も
   ここでは永遠に、名も知られない。

さらさらと、物悲しく微かに擦れる紫のカーテンに
ぞっとした──覚えのない異様な恐怖を醸していた。
僕は立ち上がり、震える心臓を抑え、言い聞かせた。
「客が部屋の戸の前にいて、中に入りたがっている──
 誰か夜分の客が戸の前で、中に入りたがっている──
   それだけだから、何も起こらない。」

僕の魂はすぐ持ち直した。もうためらうことはない。
僕は言った。「殿下、いやご婦人か、お許し下さい。
居眠りをしてしまいました。戸を優しく叩かれても、
つまり、微かに、こつこつ、と部屋の戸が鳴っても、
ほとんど聞こえませんでした。」──戸を開け放つ──
   暗闇があるばかりで、誰もいない。

僕は暗闇の奥を見つめ、立ち尽くし、怪しみ、恐れ、
疑い、誰も夢に見ようと思わなかった夢を見ていた。
しかし、沈黙は破られず、静寂は何も表さなかった。
発せられた言葉、囁かれた言葉は一つだ。「レノア?」
僕の囁きに対し、こだまが呟きを返した。「レノア!」──
   これだけだった、あとは何もない。

部屋に戻っても、僕の中では魂が燃え上がっていた。
すぐにまた、前より大きく、こつこつ、と聞こえた。
僕は言った。「きっと、きっと窓の格子にいるんだ。
なら、何者なのか確かめて、この謎を解き明かそう──
心臓を少し落ち着かせたら、この謎を解き明かそう──
   ただの風じゃないか、何でもない!」

そこで雨戸を開くと、何度もばたつき、羽ばたいて
神聖な太古の時代を纏った見事な大鴉が入ってきた。
それは礼もせず、止まりも落ち着きもしなかったが、
やがて、紳士淑女の表情で部屋の戸の上に止まった──
僕の部屋の戸の真上にあるパラスの胸像に止まった──
   止まり、座ると、あとは何もない。

すると、僕の悲しい気持ちはこの漆黒の鳥に紛れた。
その生真面目な堅物の面持ちが笑わせてくれたのだ。
僕は言った。「兜は剥げているが、小者ではないね。
酷く厳めしく古めかしい大鴉、夜の国からの客人よ──
夜の冥王の国におられた頃のご尊名をお教え下さい!」
   その大鴉は告げた。「ツギハナイ……

ぎこちない鳥が明瞭に語るのを聞き、僕は仰天した、
その答えは意味のない──何とも関係ないものだが。
というのも、誰しも思うはずだ、今生きている人で
部屋の戸の上にこんな鳥を見た人はいないはずだと──
部屋の戸の上にある半身の彫刻の上に鳥や獣がいて
   名乗っているのだ。「ツギハナイ……」

だが、静穏な胸像の上に一人座る大鴉が語ったのは
ただ一言、その魂が迸り出たような一言だけだった。
大鴉はもう話をしなかった──羽も動かさなかった──
僕がこう呟くまでは。「昔の友は飛び去っていった──
奴も、昔の希望みたいに、朝には僕を置いて行くさ。」
   すると鳥は言った。「ツギハナイ……」

時宜を得た返事に静寂が破られ、僕はぎょっとした。
僕は言った。「奴の言葉はただの空覚えに違いない。
元々はきっと、不運な飼い主が、容赦のない災難に
次から次へ襲われていた頃に呟いていた一節だろう──
憂鬱な一節を自分の希望を悼む挽歌にしていたんだ、
   こんな風に。『次は──次はない……』」

だが、やはり大鴉には気持ちが紛れ、笑いが浮かぶ。
僕は鳥と胸像と扉の正面にある安楽椅子に座り直し、
ベルベットの生地に腰を沈めながら、空想を重ねて
この気味の悪い太古の鳥の正体を考えることにした──
厳めしく見苦しく酷く恐ろしく気味悪い太古の鳥の
   潰れた声の真意を。「ツギハナイ……」

座ったまま思いを巡らし、一音節も発さずにいると
遂にその鳥の瞳の炎が僕の胸の奥に燃え移ってきた。
謎解きを続けながら、僕は寛いで頭を椅子へ委ねた、
ランプに見守られたベルベット作りの安楽椅子へと。
ランプに見守られたこの菫色のベルベットは彼女の
   席だったが、ああ、もう次は無い!

ふと、見えない香炉を揺らして空気を濃くしながら、
セラフィムが澄んだ足音を床の木立模様に響かせた。
「情けない、神の力添えとは──彼は天使を遣わし
休息を──レノアの記憶へのネペンテスを恵むのか。
飲み干せば、ああ、消えたレノアも忘れられるのか!」
   大鴉はこう告げた。「ツギハナイ……

「預言をくれ!不吉な存在よ!──鳥でも悪魔でも!──
誘惑者の手先でも、嵐に見舞われた漂着者でもいい。
孤独だが不屈な者よ、この呪われた荒れ地に預言を──
この恐怖に憑かれた家に──
僕に真実をくれ、頼む──
ギレアドに乳香があるかを──教えてくれ──頼む!──
   大鴉はこう告げた。「ツギハナイ……

「預言をくれ!不吉な存在よ!──鳥でも悪魔でも、
僕らを覆う天にかけて──僕らの崇める神にかけて──
悲しみを乗せた魂に告げてくれ、遥かなるエデンで
天使たちがレノアと呼ぶ、聖なる乙女に会えるかを──
天使たちがレノアと呼ぶ、あの尊くて眩しい乙女と。」
   大鴉はこう告げた。「ツギハナイ……

「その台詞を別れの挨拶にしてやる、鳥め、悪霊め!──
僕は声を荒げた。「嵐の中へ帰れ、夜の冥王の国へ!
黒い羽毛を、その魂が語った嘘の跡を残さずに行け!
僕の孤独を壊すな!──戸の胸像の上から立ち去れ!
その嘴を僕の心に残すな、その姿を僕の戸に残すな!」
   大鴉はこう告げた。「ツギハナイ……」

だが、大鴉は去らず、ただじっと、じっと座っていた、
僕の部屋の戸の真上にある青白いパラスの胸像の上で。
その瞳は鬼神が夢を見ているようにしか見えなかった。
その上のランプはゆらゆらと奴の影を床に映していた。
そして、僕の魂は床の上に漂っているその影の外へと
   出ようとするが──逃げられない!

▶原文(パブリック・ドメイン)

Project Gutenberg|The Raven by Edgar Allan Poe


クラシックメモ|2022年にアニバーサリー・イヤーを迎える作曲家

【没後350年】

ハインリヒ・シュッツ
 Heinrich Schütz (1585-1672)
・ドイツのテューリンゲン出身の作曲家。
・ヴェネツィアに留学し、ジョヴァンニ・ガブリエーリに師事した。
・イタリア音楽を吸収し、ドイツのプロテスタント音楽を確立した。
・1617年から没するまでドレスデンの宮廷楽長を務めた。

【没後300年】

ヨハン・クーナウ
 Johann Kunau (1660-1722)
・ドイツのザクセン出身の作曲家。
・大バッハの前任者としてトーマス教会のオルガニストを務めた。

【生誕350年】

▶ニコラ・ド・グリニ
 Nicolas de Grigny (1672-1703)
・フランスのランス出身の作曲家。オルガニスト一族に生まれた。
・ニコラ・ルベーグに師事した。
・1697年にノートルダム大聖堂のオルガニストに任命された。

【生誕200年】

ヨアヒム・ラフ
 Joachim Raff (1822-1882)
・スイスのチューリッヒ出身の作曲家。
・リストに支えられながらドイツで活動した。
・1878年に創設されたホッホ音楽院の院長を務めた。

セザール・フランク
 César Frank (1822-1890)
・ベルギーのリエージュ出身の作曲家。
・神童ピアニストとしての活躍を望まれたが、作曲家を志した。
・1872年からパリ音楽院オルガン科の教授を務める。
・フランク学派とも呼ばれる多くの弟子に慕われた。
・弟子にはデュパルク、ダンディ、ショーソンなどがいる。

【生誕150年】

アレクサンドル・スクリャービン
 Aleksandr Skryabin (1872-1915)
・ロシアのモスクワ出身の作曲家。
・ラフマニノフと一緒に音楽寄宿学校に通っていた。
・モスクワ音楽院に入学し、タネーエフやアレンスキーに師事した。
・一時教鞭も執ったが、演奏家・作曲家として生計を立てた。
・同時代の文芸や哲学、特にブラヴァツキーの神智学に傾倒した。
・神秘和音が有名であり、徐々に機能和声から離れていった。

デオダ・ド・セヴラック
 Déodat de Séverac (1872-1921)
・フランスのオート=ガロンヌ出身の作曲家。
・南フランスの郷土に根ざした音楽を目指した。

ヒューゴ・アルヴェーン
 Hugo Alfven (1872-1960)
・スウェーデンのストックホルム出身の作曲家。
・主に指揮者として生計を立てた。
・スウェーデンの情景などを描く標題音楽が多い。

レイフ・ヴォーン・ウィリアムズ
 Ralph Vaughan Williams (1872-1958)
・王立音楽大学でスタンフォードやパリーに師事した。
・ホルストとは王立音楽大学時代からの親友である。
・ベルリンのブルッフ、パリのラヴェルにも指導を受けた。
・1919年から王立音楽大学の作曲科教授を務めた。
・1932年には英国民族舞踊民謡協会の会長に選ばれた。
・イングランドの民謡や田園風景に取材した作品が多い。

【生誕100年】

▶ヤニス・クセナキス
 Iannis Xenakis (1922-2001)
・ルーマニアのブライラ出身の作曲家。後にフランスに帰化。
・アテネ工科大学で数学や建築学を学び、音楽への応用を構想する。
・戦後ギリシアの軍事政権の弾圧を受け、パリに亡命した。
・亡命後はル・コルビュジェの事務所に就職した。
・パリで音楽教育を受け、オネゲルやミヨー、メシアンに師事した。
・コンピューターを使用した確率論的音楽の提唱で知られる。

2022年7月13日

イタリア料理メモ|グリーチャ、カルボナーラ、アマトリチャーナ

■グリーチャとその仲間

・塩漬け肉とチーズを土台とするジューシーなパスタ。塩漬け肉にはグアンチャーレ(頬肉の塩漬け)かパンチェッタ(バラ肉の塩漬け)を使うのが一般的で、もちろんベーコン(バラ肉の燻製)で代用しても美味しく作れる。チーズにはパルメザン(パルマ由来の牛乳チーズ)かペコリーノ・ロマーノ(ローマ由来の羊乳チーズ)がよく使われる。

・グリーチャは塩漬け肉とチーズと黒胡椒だけで作る基本のパスタで、これを卵ソースにアレンジするとカルボナーラになり、トマトソースにアレンジするとアマトリチャーナになる。

・味わいのポイントは塩漬け肉の旨味で、アレンジをする時にはこの軸を守ると美味しくなる。例えばトマトソースのアマトリチャーナを作る時も、塩漬け肉の脂をソースの主役にすることで、他のトマトソースのパスタであるポモドーロやアラビアータ、ペスカトーレとの個性の違いを一層楽しめるようになる。

・このスタイルのパスタは、特にローマを中心とする中部イタリアで親しまれている。パンチェッタはラツィオ州やウンブリア州の特産品であり、ペコリーノ・ロマーノもその名の通りローマの食卓と縁の深いチーズなので、中部イタリアらしさを出すためにパンチェッタとペコリーノ・ロマーノの組み合わせを大事にする人もいる。

・ジューシーなパスタを食べたい人にはピッタリだが、優しい味のパスタを食べたい人や旬の食材を使いたい人、色んな具材をゴロゴロ入れたい人には別のレシピが良いかもしれない。

▶グリーチャ

塩漬け肉をじっくり炒めてからパスタを加え、チーズと黒胡椒を絡めていただく基本のパスタ。

・材料がシンプルなだけに雑に作ると貧相なパスタになりやすい。肉をしっかり焼いて脂の旨味を引き出すことと、風味の豊かなチーズを使うことが美味しく作るコツだと思う。

・チーズは種類によって塩気と風味が違うため、自分の持っているチーズに合わせて量を調節しないと、塩辛いパスタやチーズ臭いパスタになる。また、チーズ以外の材料が少ないので、チーズ消費レシピとしても活躍できる。

・塩漬け肉とチーズとパスタが既に塩味である一方で、味を引き締めるためには麺の塩気が重要になるため、塩辛さが気になる人は塩気の少ないベーコンやチーズを探してみるのが良いかもしれない。

・グアンチャーレのような脂の多い肉を使う場合は、脂がたくさん出てくるので食用油を使わない。ベーコンで代用してオリーブ油を使う場合は、(パスタを茹でる前に)ベーコンを時間をかけてじっくり焼くと、脂の風味に対してオリーブの青臭さが目立たなくなって味が整いやすくなる。特に、カルボナーラの場合は卵と肉の脂の相性が良いので、この点を意識するとより美味しくなる

・ちなみに塩漬け肉を外してチーズと黒胡椒だけにするとカチョ・エ・ペペというパスタになるが、これは言ってみればごま塩ご飯や素うどんと同じ類のメニューであり、「推しのチーズをそのまま味わいたい」というような特殊な目的がないかぎり作る必要はない。

カルボナーラ(炭焼き風パスタ)

・塩漬け肉をじっくり炒めてからパスタを加え、卵液とチーズと黒胡椒のソースを絡めていただくパスタ。

・卵液をソースにするユニークなパスタであり、温度調整に失敗すると卵液がソースではなくスクランブルエッグになるというのも「カルボナーラあるある」として良く知られている。グリーチャと同じくベーコンとチーズとパスタが塩味なので、スクランブルエッグ化を防ぐために茹で汁を使うと塩辛くなり過ぎる恐れがある。卵に対する火の扱いは他の卵料理にも通じるものなので、まずは温度調整の技術を身に着けたい。

・濃厚でとろりとしたソースを作りたい時は卵黄を多くした卵液を使い、重たくないサラッとしたソースを作りたい時は生クリームを使用する。

・最後にナツメグの粉末をほんの少し振りかけても美味しい。言うまでもないが、ナツメグ中毒のリスクがあるので絶対にドバドバかけてはいけない。

アマトリチャーナ(アマトリーチェ風パスタ)

・塩漬け肉をじっくり炒めてからトマトと唐辛子を加えてソースを作り、パスタとチーズを絡めていただくパスタ。

・濃厚な味わいのソースにしたい時にはトマトを煮詰めて水分を飛ばし、さらりとした口当たりの良いソースにしたい時はトマトの水分を残す。

・カルボナーラの卵ソースに比べると、アマトリチャーナのトマトソースはアレンジの自由度が高い。アレンジをせず、塩漬け肉の旨味がトマトソースの土台になるように意識すると、アマトリチャーナあるいはグリーチャらしい個性が楽しめる。反対に、ニンニクやハーブ類、柑橘類やワインなどを使ってアレンジすると、他のトマトソースのレシピとの違いは曖昧になるが、より複雑な風味を楽しむことができる

2022年7月12日

鑑賞記録|ホラー映画

★★★★★ 特にお気に入りの作品(一般におすすめしたい作品)

  1. 2020.07.10 リー・ワネル『透明人間』
  2. 2006.03.11 スコット・デリクソン『エミリー・ローズ』
  3. 2005.08.20 白石晃士『ノロイ』
  4. 1980.12.13 スタンリー・キューブリック『シャイニング』
  5. 2009.10.10 ジャウム・コレット=セラ『エスター』
  6. 2017.05.20 アンドレ・ウーヴレダル『ジェーン・ドウの解剖』
  7. 2020.02.21 アリ・アスター『ミッドサマー』

★★★★☆ 好みの作品(ホラー好きならおすすめしたい作品)

  1. 2018.12.07 中島哲也『来る』
  2. 2016.01.30 中村義洋『残穢 住んではいけない部屋』
  3. 2015.11.28 イーライ・ロス『グリーン・インフェルノ』
  4. 2013.10.11 ジェームズ・ワン『死霊館』
  5. 2013.03.09 ドリュー・ゴダード『キャビン』
  6. 2009.03.21 白石晃士『オカルト』
  7. 2008.06.14 ジャウマ・バラゲロ、パコ・プラサ『REC/レック』
  8. 2004.09.11 M・ナイト・シャマラン『ヴィレッジ』
  9. 2002.04.27 アレハンドロ・アメナーバル『アザーズ』
  10. 2002.01.19 中田秀夫『仄暗い水の底から』
  11. 2000.04.29 飯田譲治『アナザヘヴン』
  12. 1999.12.23 ダニエル・マイリック、エドゥアルド・サンチェス『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』
  13. 1999.10.30 M・ナイト・シャマラン『シックス・センス』
  14. 1974.07.13 ウィリアム・フリードキン『エクソシスト』

★★★☆☆ どちらかというと好みの作品

  1. 2019.03.23 チョン・ボムシク『コンジアム』
  2. 2020.02.28 アンドレ・ウーヴレダル『スケアリー・ストーリーズ 怖い本』
  3. 2019.04.12 デヴィッド・ゴードン・グリーン『ハロウィン』
  4. 2018.11.30 アリ・アスター『ヘレディタリー/継承』
  5. 2017.11.03 アンディ・ムスキエティ『IT/イット』
  6. 2017.08.19 梅沢壮一『血を吸う粘土』
  7. 2016.01.23 安里麻里、岩澤宏樹、大畑創、白石晃士、内藤瑛亮、中村義洋『鬼談百景』
  8. 2015.02.28 ジョン・R・レオネッティ『アナベル 死霊館の人形』
  9. 2014.10.25 ジュノ・マック『キョンシー』
  10. 2013.11.14 アダム・ウィンガード『サプライズ』
  11. 2010.01.30 オーレン・ペリ『パラノーマル・アクティビティ』
  12. 1981.09.12 スティーヴ・マイナー『13日の金曜日 PART2』
  13. 1975.02.01 トビー・フーパー『悪魔のいけにえ』
  14. 1969.01.11 ロマン・ポランスキー『ローズマリーの赤ちゃん』

★★☆☆☆ 無料で見るならまだいい作品

  1. 2021.07.09 ロバート・エガース『ライトハウス』
  2. 2021.02.05 清水崇『樹海村』
  3. 2020.07.00 ノンクレジット『コリアタウン殺人事件』
  4. 2020.02.28 アダム・ロビテル『エスケープ・ルーム』
  5. 2019.06.28 クリストファー・ランドン『ハッピー・デス・デイ』
  6. 2016.12.16 フェデ・アルバレス『ドント・ブリーズ』
  7. 2016.08.27 デヴィッド・F・サンドバーグ『ライト/オフ』
  8. 2016.06.18 白石晃士『貞子vs伽椰子』
  9. 2016.01.09 デヴィッド・ロバート・ミッチェル『イット・フォローズ』
  10. 2015.10.23 M・ナイト・シャマラン『ヴィジット』
  11. 2013.07.20 白石晃士『カルト』
  12. 2011.08.27 ジェームズ・ワン『インシディアス』
  13. 2011.07.02 トム・シックス『ムカデ人間』
  14. 2011.02.26 ラース・フォン・トリアー『アンチクライスト』
  15. 2007.02.17 園子温『エクステ』
  16. 1998.09.12 ヴィンチェンゾ・ナタリ『キューブ』
  17. 1998.01.31 中田秀夫『リング』
  18. 1987.12.05 スチュアート・ゴードン『ドールズ

★☆☆☆☆ 別に見なくてもよかった作品

  1. 2020.02.07 清水崇『犬鳴村』
  2. 2020.06.26 ウーゴ・カルドゾ『モルグ』
  3. 2018.09.28 ジョン・クラシンスキー『クワイエット・プレイス』
  4. 2018.07.21 アンディ・ナイマン、ジェレミー・ダイソン『ゴースト・ストーリーズ 英国幽霊奇談』
  5. 2017.06.10 ビリー・オブライエン『アイム・ノット・シリアルキラー』
  6. 2009.03.21 白石晃士『テケテケ』
  7. 2008.12.26 アレクサンドル・アジャ『ミラーズ』
  8. 1999.03.06 及川中『富江』
  9. 1998.01.31 飯田譲治『らせん』
  10. 1980.08.15 ショーン・S・カニンガム『13日の金曜日』

これから見る作品(見てない&忘れた)

■プライム・ビデオで見る作品
『コクソン』『レザーフェイス』『クラウン』『オーディション』『箪笥』
■その他の作品
『LAMB/ラム』『ハッチング』『ソウ』『マリグナント』「死霊館シリーズ」『スクリーム』『ゲット・アウト』『女優霊』『返校 言葉が消えた日』『マザー!』『呪怨』『着信アリ』『ドクター・スリープ』『チャイルド・プレイ』『オーメン』『サスペリア』『キャリー』『死霊のはらわた』『ゾンビ』『ハロウィン』『ヘルハウス』『ポルターガイスト』『ポゼッション』

2022年7月10日

服飾史メモ|ロココ時代の女性服

▶ロココ時代(rococo)

「ロカイユ」という貝殻装飾が愛好された時代であると共に、この装飾に象徴される自由で非対称な表現が芸術に広く浸透していた時代を指す。時代としては17世紀初頭(ルイ14世治世末期~ルイ15世治世初期)から1789年(フランス革命)までで区切られる。

▶「ロカイユ」(rocaille)

イタリアにルーツを持つ装飾。石や珊瑚、貝殻をモチーフとした装飾を指す名称であったが、ロココ時代には特に貝殻をモチーフとした装飾を指すようになった。庭園にある洞窟や噴水に施され、ロココ時代には特に愛好された。ロカイユの貝殻のモチーフは、古典主義美学に収まらない非対称な形態と自由な変形を特徴とする。

▶ローブ・ア・ラ・フランセーズ(フランス風ローブ)

1750年頃からフランス宮廷の正式な衣装となった。

ローブの前面は前開きになっており、空いた胸元にはV字のパネル状胸衣(ストマッカーを装着する。このストマッカーは注意を引く部分となるため、立体的かつ凝った装飾がなされる。

ローブの背面は首元から足元へ真っ直ぐ流れる深いひだ(ヴァトー・プリーツ)を持つ。ヴァトー・プリーツはアントワーヌ・ヴァトーの絵画に登場することに由来する名称である。ヴァトー・プリーツのプリーツの幅は時代と共に狭くなり、1730年頃には両肩の幅があったものが1780年代末には背中中央10cm弱ほどの幅になった。

ローブのスカート部分(オーバースカート)は左右に広がっており、これは横張りの腰枠を持つ下着(パニエ)とアンダースカート(ペティコート)によって支えられる。

▶流行の生地とアクセサリー

17世紀に紹介されたインド製の木綿の染織物(更紗、サラサ)は人気が高く、衣服の他に室内装飾にも用いられた。一方、18世紀には西ヨーロッパでも捺染(なっせん)の技術が発達した。捺染は染料を溶かした糊で模様を描き、固着した後に水洗いで仕上げる染色技法である。

18世紀にはエキゾチズムとしての中国趣味(シノワズリ)が発達し、花鳥などの模様を手描きした平絹の生地も流行した。

ロココを代表するアクセサリーはレース用品であり、髪の垂れ飾り(ラッペト)や袖飾り(アンガージャント)が流行した。その他に人気のあったアクセサリーとして、ネックリボンや対になったブレスレット(繋げるとネックレスになる)が挙げられる。

▶ローブ・ア・ラ・ポロネーゼ(ポーランド風ローブ)

イギリスから輸入された庭園の散歩の習慣に応じて出現した、スカートの裾を引き上げたスタイル。労働中にスカートの裾を捲って汚れないようにするという庶民の習慣を原型としている。

ローブ・ア・ラ・フランセーズと異なり、ヴァトー・プリーツは消え、パニエはスカートを後ろへ突き出す形状になっており、オーバースカートは分けられてリボンでくくられる。

▶ローブ・ア・ラングレーズ(イングランド風)

ロココ期からフランス革命期への移行期に出現したスタイル。

新古典主義やイギリス様式の影響を受けて堅苦しさや装飾性が後退し、機能性や単純さ、自然さが重視されている。また、背中のプリーツはウエストで縫い止められている。

■関連リンク

Wacoal Body Book|ドレスの着せ付け方法

https://www.bodybook.jp/kci/123180.html

京都服飾文化研究財団|KCIデジタルアーカイブ|ドレス

https://www.kci.or.jp/archives/digital_archives/1700s_1750s/KCI_001

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